そこで、若者の間でさかんに使われていると言われているが、はたしてそうなのか、どの程度の割合で使用されているのか、若者以外ではどうなのだろうか、などを調べようと、社会情報学科の学生がアンケート調査をしました。
調査では、
「千円からお預かりします」
「お支払いのほうはクレジットカードですか」
「おかゆいところはございませんか」
「コーヒーでよろしかったでしょうか」
「カルビ定食になります」
「書類をお送りさせていただきました」
「これなんかはどうですか」
の7つの表現について、
「気にならない」
「多少気になる」
「気になる」
のいずれかで答えていただきました。調査対象は、10代が34人、20代が52人、30代が15人、40代が18人、50代以上が24人の、計143人でした。
この中で、特に目立った結果が出たのが、「カルビ定食になります」でした。しおり作成委員会では、「カルビ定食」を「ハンバーグ定食」に変えていますが、問題は「〜になります」が気になるかどうかです。
さて、この結果ですが、右上のグラフのように、10代の人たちもバイト敬語がある程度気にはなるものの、この「〜になります」だけは、「多少気になる」という人が若干いるだけで、「気になる」という人は皆無でした。なんと、10代の人たちにとっては自然な言葉遣いとして浸透しているようです。
ところで、“しおり”に書いたように、この「〜になります」が「気になる」のは40代では50%、50代以上では42%というように、50代以上のほうが少なくなっています。「これはおかしいのではないか」、つまり、年代が高くなるにつれて「気になる」人も増加するのではないか、との疑念が生じるかも知れません。
文化庁では、このところ毎年「国語に関する世論調査」を行っていますが、その平成14年度の調査結果の中に、「あしたは休まさせていただきます」、「お会計のほう、1万円になります」、「千円からお預かりします」が気になるかどうかを年代別のグラフにしたものがあります。
これらを見ると、右肩上がりの直線ではなく、老年の方々の割合は若干少なくなります。これらと比較すると、本学科学生の調査は、調査対象人数が少ないものの、いちおう妥当な結果を得ていると思われます。
なお、ほかのいくつかの調査を見ても、いわゆる標準的な言葉遣いをする割合が高いのは、働き盛りの中年の人たちのようですね。この年代が山の頂点に来ます。
出典:大森 暁「バイト敬語について」(卒業研究論文、2006年3月)
文化庁の調査:「国語に関する世論調査」