在学生にとっては,ワードやエクセルなど,コンピュータの科目が多いので,それが専門の先生と思われがちだが,実は,先生のご専門は,計算機統計学(計算機をメインにした統計学)。
学外では,多数の学会に所属され,日本計算機統計学会の評議員・理事や日本行動計量学会の理事など,さまざまな役職をこなされている。国内だけでなく,2003年から2007年にかけては,統計計算のための統計学会である「国際計算機統計学会(International Association for Statistical Computing,IASC)」の評議員を務められ,2006年からは,同IASCのアジア地域部会(Asian Reginal Section,ARS)の理事もされている。
*評議員とは学会運営に関していろいろと審議する人で,理事とは事業を実行する人とのこと
一般には,学会は年に1回程度大会を開催したり,シンポジウム(テーマを基づいての研究発表会)を行ったりするが,先生は,これらの大会やシンポジウムなどの実行委員も多数引き受けられている。たとえば,今年(2008年)は,3月には,第91回行動計量シンポジウム(テーマは,「マイニング−調査・システム・解析手法−」)の企画者のお一人として会の運営にかかわられ,9月には,毎年夏に行われる日本の統計関係の学会が寄り集まって行われる大会「統計関連学会連合大会」の運営委員(副委員長)としてのお仕事を引き受けられている。前者は,岡山理科大学で行われたが,100人規模の会,後者は,慶應大学で行われ,規模は1000人近くになるという。また,12月には,横浜でIASCの第4回世界大会が行われるが,この国内組織委員会の副委員長や募金関係の委員長をされ,国内外から500人以上の人を迎えるための準備に忙しくされている。他にも,国際学会の役員をされている関係から,いろいろな委員を頼まれることが多く,これまでも国際会議のプログラム委員をはじめとして,多数の役職をこなされてきたそうである。
*大会やシンポジウムの実行委員の仕事には,ホームページ,広報,プログラム作成,招待講演のお願いや一般講演の参加者募集,参加登録システムの作成,会場設営,懇親会の場所探し,原稿を集めての発表論文集作り,当日の発表順や司会の割り振り,海外から来た人へのサポートなど,たくさんの仕事があるそうである。
先生自身も2005年のIASCの第3回大会(キプロス)やCOMPSTATとよばれる計算機統計の国際大会(2006年はローマで開催),国際統計協会(International Statistical Institute,ISI)の2007年の大会(ポルトガルのリスボンで開催)など,毎年,海外で研究発表をされている。今年は,COMPSTATの2008年大会がポルトガルのポルトで開催されるそうで,すにでエントリーされているとのことである。このように,社会情報学科にいながらも研究分野が理系なので,発表の機会は多く,国内でももちろん,年に2,3回は研究成果を発表をされているそうである。
学会のお仕事以外にも,「Springer Handbooks of Computational Statistics」(計算機統計学のハンドブック)のシリーズを編集されたり,Springer社の「Computational Statistics」という国際研究雑誌(季刊)の編集にもかかわっておられる。また,社会貢献的な委員もされていて,2007年4月に,全国一斉に「全国学力・学習状況調査」が行われたが,この岡山県のデータを分析し,県や家庭の教育に役立てていく「岡山県検証改善委員会」のデータ分析も担当されたりしている。非常に幅広い分野で活躍されていることに驚かされる。
最後に先生は,学生に対して,「現在の一瞬一瞬を精一杯がんばれ。そうすれば,振り返るとたくさんの思い出が出来ているはず。自分が一番よいと思っていることを一生懸命がんばってほしい。」とエールを送ってくださった。
先生がメンテナンスをされている学科Webについて説明中。
机の上の黄色の分厚い本が,先生が編集を担当されている
「Handbooks of Computational Statistics」のシリーズ。
取材:2008/02/19,掲載:2008/04/27
取材・文:塩本達也(06生),撮影:宮本将司(04生)