1.左利きの不便と便利
洋の東西を問わず、人口の約 10% は左利きで、女性よりも男性に多いことが統計でわかっています。しかし、生活のさまざまな場面が右利き向けになっており、左利きの人の多くが不便を感じています。その不便は、指摘されて初めて気づくものも多いので、いくつか身近なものを列挙しておきます。
一方、左利きの有利は、相手と対戦するタイプのスポーツで現れます。たいていの選手は左利き選手との対戦経験が少ないはずで、そのため左利き選手の勝つ確率が高くなります。
2.インターネット販売がもたらす生活の改善
90年代後半から、インターネットが商品販売に使われるようになり、インターネット商店街が登場しました。街の店舗は商圏が限られるのに対し、インターネット販売の商圏は広いので、需要の少ない商品を扱っても売り方しだいで利益が生まれます。
また、検索されて初めて販売につながるインターネット商店街では、検索に使われやすい言葉で商品を表現することが重要です。デザインでの選択以前に、言葉を用いた検索によって商品の選択が行われるためです。その点、左利き用商品は言葉で表現しやすい商品なので、インターネット販売に打ってつけです。
インターネット商店街「楽天市場」で、「左利き」をキーワードにして商品を検索すると、数千件の商品が検索されます。その中から左利き専用の商品を 500 アイテム抜き出して、その内訳を調べたのが右に示したグラフです。一般の店舗では、スポーツ用品など高額の商品で見つかる左利き用商品ですが、インターネット商店街では比較的低廉な商品も数多く出品されていることがわかります。
その他、見つけることができた左利き用商品としては、回転方向が逆のワインのコルク抜き、リューズが左側にある腕時計、缶切り、取っ手と注ぎ口が直角の急須、扇子、右から数字が振られた定規などがありました。
3.左利きの暮らしやすさの改善とまだ残る不便
小規模の聞き取り調査ですが、「左利き」のイメージを世代別に調べたところ、高齢者の中には「右手を使うよう訓練すべき」と考える人がいました。昔は、道具の不便を心配して、右手利用の訓練を促したものと考えられます。しかし、インターネットで容易に左利き用の道具が手に入るようになると、訓練して右手を使う必要がなくなります。そして、若い人の中には、「左利きはかっこいい」と考える人もおり、偏見的なイメージがめっきり減って、道具以外の面でも暮らしやすくなりました。
しかし、改善できない不便がまだ残ると左利きの人は言います。それは飲食店での座る位置です。左利きの人の左側に右利きの人が座って食事をすると、お互いの腕が当たってしまいます。そこで、左利きの人の中には、いつも左端を選ぶ人もいるようです。右利きと左利き、お互いの気配りも重要です。