■アンケートの!(なるほど)

調査問題−質問の仕方が重要

国が5年ごとに行う国勢調査,マスコミなどが実施する世論調査,企業にとって重要なマーケティング調査など,社会の様子を知るために行われるこれらの調査では,正しくデータをとることが大切です。

さて,「しおり」にあげた2つのことを同時に聞いたという問題点は,専門的に「ダブルバーレル」といわれます。このような不適切な質問は,他にもたくさん見られます。いくつかの例を示しましょう。どこが悪いか考えてみてください。

1つ目は,一見どこにも問題がないように見えますが,実は「音楽番組」に問題があるのです。音楽番組には,クラシックもあれば, 流行のPOPソングを提供する番組など,いくつかの種類があります。これを特定せずに「音楽番組」としているところが問題です。アンケートで聞きたい音楽を特定して,質問を作るべきです。

2つ目は,「コネ」です。悪い印象をもちませんか。「官僚」とか「天下り」など,回答に影響するようなイメージのある用語を質問ではできるだけ使わないようにしなければなりません。

最後は,2つの文章があるうちの前半の状況説明文が後半の質問の誘導になっている点です。

このように,質問文で使う言葉や聞き方が不適切で,調査対象が勘違いしたり,調査企画者の意図と違って受け取られたりして,回答に歪みが生じるといった問題を「ワーディング(Wording)の問題」といいます。上記以外にもさまざまな問題があり,ワーディングの問題を分類すると9種類ぐらいになります。質問文だけでなく,普段の会話でも,言葉遣いや言い回しは気を付けなければなりません…!。

ちなみに,「しおり」の挿し絵にもう1つ質問が載っています。

「喫煙は,健康によくないので,やめるべきだと思いますか。」

これも「ダブルバーレル」になっています。「喫煙は健康によくない」ことと「喫煙はやめるべき」の2つのことが入っています。喫煙は健康によくないことはわかっているけど,やめるつもりはない人もいますね。このように,「社会調査」のような人の意見や考えを正しく引き出す場面では,質問文に十分な配慮をしなければなりません。

【社会調査とは】
社会調査とは,いま社会の実態はどうなっているか,世間の人は何を考えているか,などを調べていくことで,『社会調査へのアプローチ』(大谷信介・木下栄二・後藤範章・小松洋・永野武編著,1999,ミネルヴァ書房,p.5-7)には,
「社会調査とは,社会的な問題意識に基づいてデータを収集し,収集したデータを使って社会について考え,その結果を公表する一連の過程である」
と述べられています。これを実現するために,配慮すべき事柄や統計的な理論があり,「社会調査法」といった講義や,その知識や技能をもったことを示す「社会調査士」といった資格があります。

上記は,岡山理科大学・総合情報学部・社会情報学科の「情報基礎」および「法政・社会コース」での研究成果です。

■ 話題提供:森 裕一先生



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