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地域分析研究会 研究紀要 「社会情報研究」

第13号 (2014年12月25日)  目次と概要

(特別寄稿)

二つの「こうぎ」に感謝して

越宗孝昌(山陽新聞社 代表取締役会長)

(特別寄稿)

長島のハンセン病療養所ガイド
-その歴史的建造物と遺構-

斉藤貞三(毎日新聞 大阪本社学芸部長・前岡山支局長)

(研究論文)

サービス業における関係性重視の商品開発戦略
-大手生保の事例から-

山口隆久(岡山理科大学総合情報学部社会情報学科)

要旨

本論文では、先行研究や事例からサービス業である金融機関における関係性マーケティングやCRMといった関係性重視の顧客戦略(以下、顧客関係性戦略)を考察する。新たな概念的枠組みの設定に向けて先行研究の理論的考察と検討を行うことを研究目的とし、先ず、新しいマーケティング・パラダイムである関係性マーケティングが出現した背景を考察する。次に、先行研究をより具現化するために、金融サービスでは顧客関係性を重視した先駆け的先駆的商品である住友生命「LIVE ONE」の新商品開発事例を取り上げ、関係性重視の商品・サービス提供の有効性を考察した上で、関係性マーケティングの概念を明らかにする。
これらの事例研究から、顧客の視点に立ち、顧客にとって価値のある商品の開発、販売することで、顧客の満足を得ることができることから、金融機関はより厳密な顧客との関係性重視のマーケティングが要求されることが示唆された。

キーワード:サービス・マーケティング、顧客関係性戦略、商品開発、顧客価値

(研究論文)

マーケティング研究におけるサービス・ドミナント・ロジックと価値共創の意義

大藪 亮(岡山理科大学総合情報学部社会情報学科)

要旨

本稿では、S-Dロジックや価値共創が、マーケティング研究に与える示唆やその可能性について検討する。有形財であるグッズを中心とする伝統的なマーケティング研究においては、販売を交換の終了時点と捉え、その理論枠組みが構築されてきた。しかし、S-Dロジックや価値共創を適用することで、マーケティング研究が対象とする範囲は、生産や流通、販売段階にとどまらず顧客がグッズやサービシィーズを使用・経験し文脈価値を認識するまで拡張される。さらに、S-Dロジックや価値共創を適用したマーケティングは、既存のマーケティング理論を否定するものではなく、その延長上において議論することが可能である。

キーワード:価値共創、サービス・ドミナント・ロジック、マーケティング研究

(研究論文)

家族介護と補助金政策

三原裕子(岡山理科大学総合情報学部社会情報学科)

要旨

本稿では、①親の面倒を見る子の立場に立って、親に提供する介護形態が経済環境と共に変化するのか、変化するのであればどのような条件のもとで変化するのか、②果たして補助金政策によって資本─労働比率を引き上げることができるのか、を中心に考察を行うことである。得られた結果は以下のとおりである。
(1) 家族内介護から介護の外部利用への転換は資本─労働比率を引上げない
(2) しかし、介護サービス部門に対して補助金政策を導入、またはその規模の拡充により、資本―労働比率を引き上げることは可能である

キーワード:家族介護、介護の外部化、資本蓄積、補助金政策

(研究論文)

えん罪の温床「代用監獄」・2次被害あおるメディア
-「袴田事件」「横浜事件」「甲山事件」など振り返り-

嶋谷泰典(毎日新聞 大阪本社総合事業局次長・人権と報道関西の会世話人)

要旨

静岡の強盗殺人「袴田事件」で2014年3 月、死刑確定を覆す再審決定が出され元ボクサーの袴田巌さん(78)が47年ぶりに釈放された。検察側が即時抗告したため、今後の展開は予断を許さないが、袴田さんの病状などを考えれば、とりあえず関係者に大きな安堵を与えている。そして私も、別のえん罪2 事件とともに23年前、国連で無実を訴えた団体を同行取材した経験から、感慨深く思っている。当時は無罪・再審への道のりがはるか遠かった3 事件とも、その後紆余曲折はあったが、ある程度「前進」してきたと言える。一方いずれもが、代用監獄制度を背景に虚偽自白を強いられた点で共通している。「他国ではありえない日本独特の非人権的なシステム」として、日本弁護士連合会などが廃止を求め、国連の委員会などから長年にわたって勧告を受けてきたが、今も改善されていない。

キーワード:えん罪、代用監獄、袴田事件、甲山事件、犯罪視報道、人権と報道

(研究論文)

宝塚歌劇100年
-その変遷と歴史的背景-

八木一郎(山陽新聞社 論説委員会主幹)

要旨

宝塚歌劇が今年4 月で創設から100周年を迎えた。100年といえば、一般の企業なら老舗と呼ばれる部類に入る。浮沈の激しいエンターテインメント産業の世界で、1 世紀の歴史を刻んだことは特筆される。ただ、その存在はある種の特異さをもって認識されている。演じるのは未婚の女性ばかり。「男性」は男役が演じる。熱狂的なファンに支えられている一方で、奇異なまなざしが常に注がれてきたことも否定できない。とはいえ、芸能界に多くのスターを輩出するなど、その存在感は群を抜いており、日本の芸能史に残した足跡は大きい。100年の歳月を乗り越えてきた背景には、阪急電鉄という親会社抜きには語れないが、広く大衆に受け入れられてきたこと、そしてたどってきた歴史的な背景も見逃すことはできない。宝塚100年の歩みは、日本の近代から現代までの時代とともに移り変わってきた歴史でもあった。

キーワード:少女歌劇 旧劇の改良 レビュー 清く正しく美しく

(研究論文)

日本の児童・生徒が苦手な「読解力」
-教育における新聞活用再考-

片山浩子(岡山理科大学留学生別科)

要旨

経済協力開発機構(OECD)が15歳を対象に3 年毎に実施しているPISA(Programme for International Student Assessment学習到達度調査)は、習熟度レベル別結果で読解力をレベル5 からレベル1 未満の6段階に分け、各レベルの生徒の割合を示している。読解力1 位のフィンランドはレベル3 以上の生徒の割合が約80%に対して、日本の生徒は60%以上であった。日本の生徒は読解力の低さが2003年に明らかになった。06年の学習指導要領改訂では「ゆとり」に代わり「言葉の力」を柱に、「言語力」の育成を図ることを試みたが、07年に43年ぶりに復活した全国学力テストでも「読解力」の問題が浮き彫りとなった。日本の児童・生徒が「読解力」の問題で苦手としたのは自身の経験を踏まえて意見を述べる問題であった。従来の一問一答とは異なり、記述式解答の「無回答」が得点を低くした要因であると考えられている。「確かな学力」に方向転換して最初の12年のPISAでは、「読解力」は、前回09年の8 位から4 位まで順位を上げ大きく飛躍した。
児童・生徒の考える力を育成できる一つの教材として、NIE(Newspaper in Education、教育に新聞を)が注目されている。アメリカでは1930年から始まった記録があり、自身の意見や考えを広げ、作文に活かすことができ、見聞を広げるきっかけになったという記録がある。日本では明治から新聞を活用した実践教育の記録があることから、100年以上前から新聞教育は思考力の育成に一役勝っていたといえる。
筆者が11年に行った「NIEと児童・生徒の読解力~実践校・非実践校における調査からの考察」では、実践している学校は校種を問わず、「閲読率」「閲読習慣」が高く、情報に関心を持つようになっているという結果が得られている。
本稿では、NIEの歴史やPISAの特徴を紹介する。「NIEと児童・生徒の読解力~実践校・非実践校における調査からの考察」で調査した「閲読率」「閲読時間」「閲読習慣」の結果を改めてまとめ直し、児童・生徒の閲読傾向を見直す。「学校学力」から「生涯学力」への転換を目指した取り組みを紹介し、「生涯学力」の構築における新聞活用を再考する。

キーワード:NIE PISA 総合的な学習の時間 読解力 生涯学力

(研究論文)

データマイニング手法による社会情報学科イメージの分析

森 裕一・黒田正博・松田祥治(岡山理科大学総合情報学部社会情報学科)

要旨

現在の社会情報学科の学科イメージをより正しくとらえるために、CS(顧客満足度)ポートフォリオ分析やテキストマイニングなどのデータマイニング手法を用いて分析することを前提に、2013年度の在籍者に対して調査を行い、回答が得られた268人のデータに対してデータマイニングの手法で分析を行った。 その結果、全体的な学科のイメージとしては「情報の勉強ができる」と「岡山理科大学の文系学科である」が最も強いこと、入学してからの満足度は、勉強面で高いが、コンピュータや情報の学習内容および人材育成面については低いことがわかった。興味や将来に期待していることについては、実学的要素の強い分野に高い興味を示し、将来は地元での就職と総合職、公務員、IT系といった文系かつ情報系の学科を反映した職種への希望が多いことが明らかになった。また、後輩に勧める学科のポイントから社会情報学科のよさを考察すると、幅広い分野や社会に役立つ知識が学べること、理系・文系が融合されていること、情報技術や資格が取得できるといったことが特徴として抽出できた。

キーワード:調査研究、満足度、CSポートフォリオ、テキストマイニング

(研究論文)

吉備聖霊

志野敏夫(岡山理科大学総合情報学部社会情報学科)

要旨

京都の御霊神社に祀られている8 柱の怨霊神の中に吉備聖霊というものがあるが、これがどのような怨霊を祀っているのか定かではない。本稿では『梁塵秘抄』に出てくる吉備津神社に祀られる「艮御前」であり、より具体的には「吉備の3 反乱」で族滅された吉備の下道臣前津屋であったと考えた。記紀に記された吉備諸族の系譜には大きな矛盾があり、そこに隠された吉備諸族によるヤマト王権に対する祟りがうかがえるからである。

キーワード:御霊・怨霊、記紀の吉備諸族系譜、吉備とヤマトの関係、艮御前

(研究ノート)

中国人民解放軍進駐以前の傣族の伝統的土器製作
-西双版納傣族自治州における製作者の移動と身分階層を中心として-

徳澤啓一(岡山理科大学総合情報学部社会情報学科)・兪 蕙(岡山理科大学大学院総合情報研究科社会情報専攻)

(研究ノート)

ベトナム北部における伝統的焼き締め陶器製作の民族誌
-ソンラー省ムオンチャイン村におけるターイ族の焼き締め陶器製作を中心として-

平野裕子(上智大学アジア文化研究所 )・Nguyen Phuong Thuy(中央大学大学院)・徳澤啓一(岡山理科大学総合情報学部社会情報学科)

(書評)

猪口孝・G. ジョン.アイケンベリー著『日本・アメリカ・中国-錯綜するトライアングル』(原書房、2014年4 月)316ページ+vi

松村博行(岡山理科大学総合情報学部社会情報学科)

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