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社会情報学科・社会情報専攻 研究紀要 「社会科学系研究」

第3号 (2005年7月30日)  目次と概要

(論説)

地域経済政策の課題と「地域政策統合」
―『地域政治経済学』における中村剛治郎氏の「地域」概念をめぐって―

泉 俊弘

要約

  地域経済学の理論的研究は,地域における経済構造とその運動法則を明らかにするものであるが,実際に地域経済が抱える多様な課題に取り組むためには,理論と現実を橋渡しすることのできる分析装置が必要になる。近年,地域経済政策の課題が多様化し,経済分野と関連する領域へと拡大を見せる中で,新たな理論構築と政策提起の必要性が高まっている。本稿では,最近における地域経済学の動向について,中村剛治郎氏の著書の内容を検討しながら展望を試みる。

キーワード:地域経済,地域政策,環境政策,政策統合,環境学と経済学の学際領域

(研究ノート)

実施された公共事業「笠岡湾干拓」と中止された「三番瀬埋立」・「藤前干潟埋立」
「アゼルバイジャン国バクー市環境管理計画」策定に関する所感

井上堅太郎,田村真由子,泉俊弘,待井健仁

要約

  笠岡湾干拓は1968年12月に事業に着手,1977年8月に干陸化を完了し,1990年3月に 完工した。瀬戸内海の一部の約1,800haの干陸化を伴い,かつ「天然記念物カブトガニ繁殖地」を消滅させるという極めて重大な環境上の損失を伴うものでありながら,環境影響評価制度が実施されるようになる直前の時期であったので,環境影響評価手続きはなされず,埋立承認され,事業が実施された。1990年代に注目を集めた千葉県の三番瀬101ha,名古屋市の藤前干潟47haの埋立計画については,埋立事業について環境影響評価の手続きの半ばの段階で,主に東京湾,伊勢湾の最奥部に残された干潟としての価値が注目されて最終的に計画は中止された。1960年代後半頃から1990年代の数十年の間に,環境に対する価値観について,計量はむずかしいが,日本社会に大きな変化が起こっていることを知ることができる。

キーワード:環境影響評価,笠岡湾干拓,カブトガニ,三番瀬,藤前干潟

(研究ノート)

JR福知山線事故報道におけるメディアと市民の意識の乖離
―「朝日」「毎日」「読売」「山陽」4紙と意識調査からの考察―

木村 邦彦

要約

  乗員・乗客107人の死者と約550人の負傷者を出したJR福知山線電車脱線事故は,「メディアスクラム(集団的過熱取材)」をはじめとするいくつかの課題を突きつけられているメディアにとって,回答を示す機会だった。しかし,取材・報道は相変わらず過熱気味に展開し,11年前の航空機墜落事故遺族会からは,取材への抗議と申し入れがなされたように,読者,視聴者の声は時には非難を含むものであり,また,今回の市民意識調査では意外と冷めた見方が浮き彫りにされるなど,回答は合格点からはほど遠かったようだ。逆に読者,視聴者との間にある「溝」が広がった感さえある。メディアにとっては,この「溝」を埋める努力がこれからの大きな課題になるだろう。

キーワード:メディアスクラム,ヘリ騒音,二次被害,ドラマ,社会調査

(研究ノート)

統計の扱いと統計教育をとりまく現状について
-社会科におけるグラフの扱いと都道府県統計部局のデータ提供の実際―

森 裕一,鳥越佳子

要約

  教育的な観点から,統計が学校教育や社会でどのように扱われているかをみるために,学習指導要領や社会科の教科書,各都道府県庁の統計関連部局が開設するWebページや刊行物を調査した。その結果,学校教育においては,算数・数学科で内容が削減されていること,社会科を例にとるとたくさんの統計的表現が扱われており,その基礎教育を中学校地理で受け持っていること,しかし,それだけでは十分な統計的概念が教育されているとはいえないことがわかった。また,統計関係部局のWebサイトなどでは,いくつかの府県で,教育的観点での統計データ等の提供に工夫がみられるが,多くはまだ子どもや市民に適した形での統計関連情報の提供が行われてないことがわかった。

キーワード:統計教育,社会科教育,学習指導要領,統計部局Webページ,統計関係刊行物

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