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社会情報学科・社会情報専攻 研究紀要 「社会科学系研究」

創刊号 (1999年2月20日)  目次と概要

(論説)

全制的施設の歴史

高野 洋志

要約

  ゴッフマンの「全制的施設」という概念のなかには、起源のことなる多様な施設が含まれている。これらの施設の内部の社会に共通な要素を見いだそうとするのが、ゴッフマンの立場である。これに対し、様様な施設の成立した歴史を見ることにより、なぜ国家が人間を隔離し,狭い空間に閉じ込めるのかその理由をさぐった。

キーワード:収容所、隔離、排除、矯正

(研究ノート)

日本の環境海外協力-その1
エジプトにおける環境監視関連プロジェクト

井上 堅太郎

要約

  日本の環境協力の一環としてエジプトに対する「環境モニタリング研修センタープロジェクト」、「エジプト地域環境監視網機材整備プロジェクト」が実施されている。 日本は、1994年のエジプト環境法の制定後、専門家を派遣し、エジプトについて「開発途上国・環境対策調査」を実施し、欧米諸国による環境分野の協力等を確認のうえ、他の先進国が実施していない環境監視・測定技術の環境協力を行うこととしたものである。 環境政策を進めるには理化学的な環境の把握は不可欠であるし、エジプトでは環境法の施行直後のため、一般環境、発生源の監視、測定を行わねばならないが、ほとんど体制が整っていない現状から、日本の協力プロジェクトは時宜を得たものである。 一方、廃棄物、規制基準の施行、工場の立入検査、公害対策技術に関する技術協力もエジプト側から求められたが、プロジェクトの目的に密接な関わりのある部分に限定して関与することとした。そのことは適切な判断であるが廃棄物その他の分野については、別の環境協力等において考慮が必要とされるものである。 エジプトで進められている種々の環境分野の協力の推進、今後の望ましい環境協力の実現、日本側の事情による協力内容に関する調整、他の先進国・国際機関の環境協力の動向の把握等について、的確なあり方や判断が求められている。日本側の体制の充実、強化、及び専門家等の質の確保は重要な側面である。

キーワード:環境協力、環境海外協力、環境監視、環境モニタリング、エジプト

(研究ノート)

土地流動化対策と情報提供
―日本国有鉄道清算事業団による保有土地処分を事例として―

泉 俊弘

要約

  90年代の日本経済は、「不動産バブル」の崩壊に伴う金融資産価値の下落が多様な経路を経て実体経済の悪化をもたらし、長期の不況過程から脱出できないでいる。このような状況下、銀行業の不動産担保融資に起因する不良債権の処理が急務とされ、土地流動化対策は経済対策の重要な柱のひとつになっている。  ところで1987年に実施された国鉄の分割・民営化によって発足した日本国有鉄道清算事業団は、旧国鉄から引き継いだ土地資産の処分によって長期債務を償還し、ひいては国民負担を軽減させるという役割を担ってきた。本事業団の実施してきた土地資産処分事業は、今日の土地流動化施策をいわば先取りするものであり、その経過・特徴等を検討することによって現代日本の経済的課題に対する展望を得ることができる。  本稿では、筆者が作成した日本国有鉄道清算事業団の保有土地データベースにもとづき、事業団が実施した土地処分の実態とその成果について検討した。そこから得られる一応の結論は、実物資産と金融資産の裁定が行なわれるような市場(不動産市場はその一例)においては、取引物件に関する情報が将来予測の形成を通じて現在価額の決定にきわめて重要な役割を果たすということである。

キーワード:土地流動化、実物資産、金融資産、不動産評価、土地情報

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