先生のご専門は環境政策。学外での活動は、国際協力機構(Japan International Cooperation Agency: JICA )への協力、環境省への協力をはじめ、倉敷市の環境審議会、廃棄物審議会、香川県の廃棄物審議会と3つの審議会、社会人への講義や講演などがある。また、所属学会は、大気環境学会、日本環境科学会など数多くあり、社会情報学科の中で多忙を極めている先生のひとりである。
なかでも、JICAの「環境管理分野別課題別支援委員会」の委員として、現在は主にエジプトにかかわっておられる。エジプトに対するJICAの技術協力に関与して、もう10年以上になるという。
1990年代に日本のODA(政府開発援助)は1兆円にもなった(現在は7〜8000億円程度)。そのうち環境協力は約30〜40%。エジプトに対して日本は、環境分野において数十億円をかけて技術的な援助をしてきている。だが、先生によると、ODA予算が1990年代に急増し、JICAの職員の人たちが環境に精通していない場合があり、また、環境政策の専門家の知識が必要とされるような場合があるとのこと。そこで、井上先生が助言などをしているのである。エジプトの環境が少しでも良くなるように協力しているわけである。
また、JICAの支援で、エジプトから日本に研修生が来ることがあり、エジプト政府の環境政策にかかわる職員の方が、数週間から1ヶ月ほどをかけて、日本各地を回りながら知見を広めてもらうような研修を行っている。先生は、その研修の一環として行われる講義も受け持っておられる。講義は英語で行われるそうだ。環境政策の基本的な部分を教えられている。
研修全体の終わりには、研修生が研修から得たものについてプレゼンテーションをするのだが、そのプレゼンテーションについても先生がコメントを出されるのだそうだ。
さらに、先生は、2007年9月、岡山理科大学を会場として行われた「第48回『大気環境学会』年会」の実行委員長も務められた。前年の11月から準備に取り掛かって丸1年の取り組みとなり、大変忙しかったとも語られた。
学外の仕事を引き受けることについて、「できれば研究に没頭し、学生たちと共に学ぶことに専念したいとも思うが、学外の仕事を通じていろんな情報が手に入る」と言う。情報を素早く提供してくれたり、情報の本質を知らせてくれたり、ときには思わぬ情報が舞い込んでくることもあるのだという。論文や報告書などを読むだけではわからない情報が数多く手に入るのである。そして、それが私たち学生の研究指導や教育に役立つのだそうだ。
「外の仕事を引き受けるというのはしんどい面もあるが、それを引き受けることによって社会で新しく何が起こっているかということが見えてくる。すべて引き受けるということはできないが、できる限りは引き受けるべきだと思っている」と語ってくれた。
2007/11/20
取材・文・撮影:田中基紀(05生)・小井夏美(05生)
資料写真提供:井上先生