経営miniレクチャーシリーズ

マーケティング 08

同じモノはみんな同じ価値?
 ~「交換価値」と「文脈価値」~

燃費がよいことだけが自動車を買う動機か?

街を歩いていると、多くのエコカーが、走っています。エコカーは、地球環境に優しく、しかも燃費が良い=ガソリン代が安く済みますから、たくさん売れているのもうなずけます。
では、なぜ、自動車メーカーは、多大な研究開発費を投入して、燃費の改善を図ったり、さらには、その良さを有名女優を起用して広告宣伝したりするのでしょうか。従来のマーケティングの考え方では、その答えは「多くの車を売るため」となります。当たり前じゃん!というツッコミが入りそうですが、一般的に、これは「交換価値」(売買)に基づいた考え方になります。
しかし、本当に購入した車の燃費が良いかどうかは、実際に自動車を利用するまでわかりません(販売時に示す燃費の良さを気にし過ぎるあまり、データの改ざんといった問題もときに起きたりします)し、そもそも燃費を気にしない人もいるかもしれません。恋人とのデートのために使っている人もいれば、家のガレージに保管してニヤニヤしながら眺めている人もいるでしょう。つまり、その使用方法や理由は、ユーザーによっても、その使用状況によっても大きく異なるといえます。
あるご家庭の話ですが、ご主人は、古い車が大好きです。しかし、その車、家族にはとっても不評です。すぐ故障するし、見た目もダサいし・・・。故障して動かなくなった場合、ご主人にとっては、動かなくなったことでますます愛おしさが増しますし、その一方で、車を移動手段としてか見ていない奥様は、動かないオンボロ車なんて、と、ますます嫌悪感が増すわけです。
そう、ユーザーによって、その商品に対する愛着度や満足するポイントは全く違うわけです。
そこで、商品の販売(購買)時ではなく、実際にユーザーが商品を使用しているときにフォーカスするマーケティングが、最近注目されています。これは「文脈価値」(使用)に基づいた考え方です。

「売る」マーケティングと「使う」マーケティング


新商品が出たとき、売り手側は、一番のセールスポイントを前面に出して宣伝を行います。上の例でいえば、「燃費」です。当然、他社との差別化を図るために、イチオシの特徴で攻めるわけです。しかし、実際の販売時には、買う人(=使う人)の「価値」をしっかり考えて、その商品を説明しなければなりません。当然、「燃費」だけではなく、外観、乗りごごち、操作性、ひょっとして小物入れの数や位置などにも使う人が見出す特徴=価値はあるはずです。したがって、「売る」人は、その「使う」人に応じて、特徴を説明してあげないといけません。
さらに、この考えを広げると、自動車メーカーは、燃費の良さや外観を通した交換価値にこだわった車開発だけでなく、その交換価値を文脈価値の観点からとらえ直した開発や、さらには、古いクルマを長く乗れるような取り組みをしたり、楽しいドライブイベントを企画したりといった商品戦略やサービスを考える必要が出てきているといえます。
一言にマーケティングといっても、「売る」マーケティングと「使う」マーケティングという2つの考え方があるんですね。

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