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地域分析研究会 研究紀要 「社会情報研究」

第16号 (2016年3月31日)  目次と概要

 

(研究論文)

消費財メーカーのマーケティングにおける新たな分析枠組み
 −S-DロジックとSロジックの視点から−

菅生 一郎・山口 隆久

要旨

本稿は、サービスの視点から4Psマーケティングを捉えなおそうとするS-DロジックおよびSロジックに対する批判的考察を通して、消費財メーカーのマーケティングを対象とする実証研究に向けた、新しい分析枠組みを構築することを目的とする。
そのため、4Psマーケティングから、S-Dロジック、Sロジックへといたる一連の先行研究に対するレビューと批判的考察を通じて、消費財メーカーのマーケティングにおける分析枠組みに適用する上での先行研究の限界を明らかにした。それは、4Psマーケティングから、Sロジックへと理論的な進化を遂げる中、S-Dロジックは、交換理論の置換を意図しながら、抽象的な議論に終始し、マーケティング研究への新たな含意が乏しいという限界、また、Sロジックは、不特定多数の顧客へと提供される大量の物財とその消費プロセスへの関与について、理論的な説明がなされていないという限界である。
こうして示された理論的な限界に対して、本稿では独自の分析枠組みにより、消費財メーカーに対してもSロジックを適用しようとした。それは、B to B、B to Cの両面における価値共創的なマーケティングを展開することにより、広範囲の顧客に対して、多数の直接的な相互作用を起こすというフレームワークである。このような新しいマーケティング活動が、サービス志向型のマーケティング組織により展開されることで、消費財メーカーに対して、Sロジックを分析枠組みとして適用することができる。
また、そうした新しい理論に則ったマーケティング活動は、相互作用を担うパートタイム・マーケターと顧客の間で「インタラクティブ・マーケティング機能」を実現する。そのため、副次的な効果として、顧客の文脈価値に関する情報収集も可能になる。

キーワード:S-Dロジック、Sロジック、消費財メーカー、北欧学派、B to B、B to C

(研究論文)

日本各地の観光による地域振興の方向性についての一考察

鷲見 哲男

要旨

人口の減少局面を迎えた我が国において、地方の衰退は避けられない問題として取り上げられている。
昨今この問題に対応するための方策として、観光による地域振興が脚光を浴びている。観光庁からは、観光地域づくりプラットフォームや日本版DMO等の政策も打ち出され、呼応した地域では成功事例も出始めている。これらの動きについて旅行市場の発展と変化、あるいは旅行商品の今後のあり方等を検討しながら、今後の観光による地域振興の方向性について考察を試みたい。

キーワード:観光による地域振興、着型観光、訪日旅行者数、国内旅行

(研究論文)

「世論」はどう形成されてきたか
~メディア報道との関わりから~

八木 一郎

要旨

「世論を喚起する」「世論の引き付けに躍起になる」「世論を意識した対応」「世論の動向が鍵」-。日々の新聞紙上では「世論」の二文字を目にすることがしばしばである。民主主義社会において、政治の根本は民衆の意思である「民意」であり、政治や政策に民衆の声である「世論」を反映させることは、当たり前のように考えられている。政治家もおしなべて「世論重視」を掲げる。しかし、現実の政治はどうだろう。国政の場ではこのところ「世論無視」ともいえる動きが目立っている。安全保障政策や原発再稼働など国論を二分する政治課題が相次いでおり、政治と世論の乖離が顕著になっているといえる。考察すると、世論や民意がどのように形作られているかをみてみると、世論調査や選挙制度という民主制度とともに発展してきた今の仕組みが、決して万全なものではないことが理解できる。

キーワード:大衆社会 世論調査 メディア 選挙と民意 世論と民意

(研究ノート)

項目反応理論によるアンケートデータの分析

片山 浩子・朝原 広喬・黒田 正博・水谷 直樹・森 裕一

要旨

アンケートやイメージ調査に内在する集団依存性と項目依存性の問題を解決するために、テスト理論で開発された項目反応理論を調査データに適用することを試みる。具体的には、岡山理科大学総合情報学部社会情報学科のイメージ調査(森 他,2014)のデータの一部に対して、分析を行った。その結果、学生が特に意識を向けている項目や改善の必要性がある項目などがわかった。これらの考察は、対象とした集団の特徴ではなく、母集団として想定される集団が示す結果であることから信憑性の高い結果であること、さらに、グラフによる可視化により、項目の特性が把握できることがわかった。

キーワード:テスト理論、調査研究、イメージ調査、項目困難度、識別力、満足度

(研究ノート)

魏志倭人伝をめぐる諸問題について

志野 敏夫

要旨

陳寿著『三国志』は、魏王朝を漢王朝を継ぐ正統な王朝であるという立場で書かれている。そうであるならば、いわゆる魏志倭人伝もその立場で書かれているという観点から解釈するべきである。すると、倭は後進国であるかもしれないが、漢皇帝の徳化により礼が備わっているとする叙述を読み取ることができる。またそのことから、後漢に賜与された金印「漢委奴国王」は伊都国の王であったとすべきであることになる。また卑弥呼が行ったという「鬼道」も、そうした立場からすればそれは五斗米道を表したはずで、ゆえに「能惑衆」と書かれた。さらに、軍事的側面からも読み取るべきで、問題とされる里程も、実際の距離ではなく、到達するのに何日かかるかという観点で記録されていると捉えるべきであろう。当時の中国人により書かれたという大前提を以って解釈することに留意すべきである。

キーワード:魏志倭人伝、王朝の正統性、皇帝の徳化、軍事的側面、委奴国、鬼道、里程問題、『三国志』という書名

(調査報告)

中国雲南省からラオス最北部への伝統的土器製作の移転
−土器製作の村寨に遺されたMow Nam 等の形態等の比較を通じて−

徳澤 啓一

(書 評)

平岡昭利著『アホウドリを追った日本人−一攫千金の夢と南洋進出』

辻 貴志

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