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地域分析研究会 研究紀要 「社会情報研究」

第14号 (2015年3月1日)  目次と概要

(研究論文)

ICTを活用した顧客関係性構築

高橋良平・山口隆久

要旨

CRM(顧客関係管理)は市場データを意思決定に利用するという段階から、さらに、顧客との関係性構築を目的とするという意味で、ICTの手段としての利用にとどまらず、むしろ関係性を志向する関係性マーケティングを体現するものとして捉えることが可能である。企業と消費者との取引関係は元来、匿名的かつ離散的なものであり、関係性が存在しないところに関係を構築しようとする試みの可能性や効果は、ICT(情報通信技術)の進展や入手性をその根拠としている。そこで、本稿では、CRMを実施することによって、顧客維持が可能になり、企業の収益性につながるかどうか、について検証すべき課題と置いた。
調査対象とした地域銀行にとっては、インターネット・バンキングやコールセンターを通じた顧客とのコミュニケーションを戦略的に設計するのみならず、意思決定への洞察が得られるレベルの高度な分析を行って、一部門のツールではなく、組織全体としてCRMに取り組んで行かなければ企業の収益性には繋がって行かないことが明らかになった。

キーワード:ICT、CRM、関係性マーケティング、地域金融機関、顧客維持戦略

(研究論文)

国内各地で取り組まれている観光振興施策についての一考察
−奈良市観光協会による夏期閑散期対策キャンペーンを事例として−

鷲見哲男

要旨

観光振興施策は日本各地で多くの事例を見ることができるが、実際の活動は、従来観光資源ではなかった「なにか」を資源として育成する手法や観光プロモーション活動を活発に行い、既存の資源をよりアピールするといった手法などの4 項目の活動が連携して実施されている。そこで、本研究では、奈良県奈良市にいて奈良市観光協会が取り組む「夏期施策」を分析することで、その効果と今後の課題を明示することを目的としたい。
考察の結果、従来の奈良の観光振興の活動は、最大の強みである歴史文化遺産に依存し、新たな観光資源の開発は他地域と比較して大きく遅れていると言わざるを得ない。国内旅行市場の動きは、顧客の価値観の多様化が進み旅行先の選択肢にも様々な価値が求められている。また、インバウンド市場は拡大の一途をたどっており、今後も市場は拡大を続けて行くものと思われる。このような環境下で奈良の取るべき戦略は、世界的にも圧倒的な数多くの歴史文化遺産の存在を強みとして、様々な価値観を持つ新たな顧客に、奈良の情報・商品企画等を提供し続けることが必要であろう。

キーワード:観光振興施策、地域振興、地域活性化、まちづくり、価値多様化

(研究ノート)

価値共創視点での製造業マーケティングの研究
−先行研究レビュー−

清野 聡・大藪 亮

要旨

近年サービスの視点から製品も包含する形でのマーケティング研究が行われている。価値共創という新しい概念がS-DロジックおよびSロジックにおいて議論されている。それらからは、企業が顧客の使用段階に入り込み、顧客と相互作用することにより新たなマーケティング機会が創出されるとの示唆が得られる。しかしながら、いずれのロジックにおいても企業は何をすればよいか、具体的な理論は提示されておらず、その実現が待たれる。本稿では、価値共創概念の製造業への適用に向けて、形式的な具体化に留まらず、むしろサービスの原点に立ち戻り、サービスの本質を抽出し、それを踏まえた上で価値共創における議論の具体化を図る。また製造業における直接的相互作用を行っているB to Bにおけるマーケティングから、B to Cにおいても踏まえるべき有効な要素を提示する。

キーワード:価値共創、サービスマーケティング、関係性マーケティング、S-Dロジック、Sロジック

(研究ノート)

「活字離れ」の学生における情報行動の変化
−岡山理科大生調査などからの考察−

木村邦彦

要旨

“活字離れ”が深刻である。活字離れは新聞離れ、読書離れを引き起こした。若い世代でますます深刻化している。憂える声には、「毎日のニュースはインターネットで見る。情報から離れているのでなく、小まめに接している」という返事が返ってくるが、総務省の2014年版「情報通信白書」は、ネット利用者数は年を追って増えているものの、「情報収集でネットを利用」よりも「コミュニケーションで利用」に軸足が移っているという。“情報音痴”が広がることになる。ネットでの情報収集は、往々にして、ニュースは知っていても内容は霞のかかった状況、知っているのは「何かがあった」ということだけだと、問題提起もされているが、さらに状況は悪化する危惧が生じる。「社会問題・政治問題への関心の低さ」が浮き彫りになってくる。新聞を読まないために記事から何かを読み取る「読解力」を身につけることができず、物事を考える“学習”も十分にできない。結果として、書く文書も怪しいものになり、文書に主語、述語がなく、なかには句読点を使えずに延々と文書を続ける、何が主張したいのか、言いたいのか、理解に苦しむ文書を、学生の間で、よく見かけるようになって久しい。
PISA(Programme for International Student Assessment、注1)、全国学力テストなどで読解力不足を指摘された教育界では、12年度の小学校の学習指導要領にNIE(Newspaper in Education、「教育に新聞を」)を導入、翌13年度に中学校、14年度高校へと広げた。成果はこれからであるが、12年のPISAや14年度の全国学力テストには成果の片りんも見られ始めている。
「新聞は社会の教科書」であることを、もう一度思い起こして、この“インターネット万能”といわれる時代、「活字」と「新聞」、「書籍」を考えてみたい。

キーワード:活字離れ、インターネット、読解力

(研究ノート)

アソシエーション分析を用いたイメージ分析

竹内堂真・片山浩子・森 裕一

要旨

マーケティング分野で発展してきたアソシエーション分析を、アンケート調査の分析に利用し、調査対象となる集団の様相を分析することとマーケティング分野以外でのアソシエーション分析の利用可能性を探ることを試みた。有用な相関ルールの抽出には、アソシエーション分析で通常利用されるアプリオリアルゴリズムを用い、分析には、大学生に対して行った「コーヒーショップ」と「所属する学科」に対するイメージ調査のデータを用いた。その結果、コーヒーショップのイメージ調査では、ショップのイメージが明確になり、すでに講じられている接客対策の妥当性を確認することができた。また、学科のイメージ調査では、先行研究で明らかになっている学科のイメージと同じ結果を得ることができた。これらより、マーケティングの分野のみならずイメージ調査などの分野でもアソシエーション分析を適用可能であることが確認できた。

キーワード:アソシエーションルール、アプリオリアルゴリズム、調査研究、イメージ分析

(調査報告)

フィリピン・セブ州マクタン島における潜水採貝漁の事例報告

辻 貴志

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