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地域分析研究会 研究紀要 「社会情報研究」

第12号 (2014年3月31日)  目次と概要

(研究論文)

日本企業による中国市場への現地適応化戦略に関する先行研究

李  凱・山口隆久

要旨

本稿では、日本企業の海外進出における市場への現地適応化という視点から、中国市場で事業展開を図っている現地日本企業の実態分析を通じて、現状を踏まえながら、日本企業の海外進出における課題や問題点を抽出、検討することを目的とし、先行研究レビュー、および企業へのヒアリング調査を実施した。
先ず、中国における日本企業進出の経緯と現状、および中国市場の経営環境について分析を行なった後、中国市場の多様な社会性や地域性などの重要性を把握することとする。さらに現地適応化戦略の重要性や日本企業の経営上の問題点を明らかにしていく。
日本企業にとって、中国市場への進出・成功を果たすには、日本の技術・製品・人的資源管理等は、中国市場に適した戦略の構築が必要となる。そのためには、現地適応化(低コスト化の工夫・現地人事制度の適応・現地スタッフの昇進昇格等)を図るための戦略の再構築が必要だと考えられる。

キーワード:現地適応化、中国市場、経営戦略、マーケティング、日本企業

(研究論文)

価値共創型企業システムの理論化へ向けての一考察

藤岡芳郎・山口隆久

要旨

価値共創型企業システムは「企業と顧客の相互作用」と「相互作用を通した価値創造へ向けての組織運営」の二つの視点で考察することができる(藤岡〔2012〕)。本稿は昨年度の藤岡・山口〔2012〕の残された課題である企業が顧客起点でおこなう組織運営の方法の構築を目指して概念化を進展させることを目指す理論研究である。これまでの研究からは価値共創型組織運営のためには、これまでの経営学やマーケティング研究が依拠してきた対象をオペランドとして捉え、操作・管理を意図する研究から脱皮することが必要であることが導出された。そこで、本稿は新たな理論構築の土台として価値共創型組織運営を概念化するために最近の心理学やその影響で構築されてきた経営学の研究を考察する。そして、価値共創型組織運営の仮説生成をおこない実証研究へ向けた概念化を目指す。

キーワード:顧客起点 サービス・ドミナント・ロジック ポジティブ心理学 サーバント・リーダーシップ オペラント オペランド

(研究論文)

ピザ・デリバリービジネスにおけるGPSロガー活用に関する考察

水谷直樹・下谷真史

要旨

情報化への投資が進む大企業に対し、中小企業では資金的余裕が乏しく、情報化が大企業ほど進んでいない。一方、個人の情報化はインターネットの登場および携帯電話の普及とともに急速に進み、種々の安価な情報デバイスも登場した。代表的なものとしてタブレット型端末やスマートフォンが挙げられ、このような個人向け情報デバイスを業務で活用する企業も現れている。そこで本研究では、小規模な事業単位のビジネスにおいて、安価な情報デバイスを活用することによって初期導入費用を抑えながら高い効果が期待できる情報化の実施例を示す。プロトタイプ運用を行い、その効果について考察することにより、この方面の情報化促進に寄与するものと考える。
具体的には、食事デリバリービジネスにおける配達業務へのGPS受信デバイスの活用を考察する。食事デリバリービジネスの顧客はリピーターが多い。そこで、配達業務において顧客ごとに配達経路を記録し、その情報を再利用すれば業務の効率向上が期待できる。ところが、配達員は一般にアルバイトで構成されている上、組織的に配達経路情報を蓄積する体制が整っておらず、配達員の間で情報の共有が行いにくい。本稿では、配達員に負担をかけることなく配達経路を電子データとして記録できるGPS受信デバイスの導入を試み、入手データの活用による業務の効率向上について検討するとともに、データの戦略的利用および新人教育への利用について述べる。

キーワード:デリバリービジネス、GPSデータロガー、最適配達経路、情報共有、地理情報

(研究論文)

近年の世論調査をめぐる一考察

八木一郎

要旨

世論を尊重し、民意に耳を傾けるのは民主政治の原理・原則である。その基本となるのは国民の投票による選挙だが、補完的な役割を果たしているのが世論調査である。日本では戦後、民主社会に踏み出す中、民主主義の象徴として世論調査が位置付けられた。しかし、近年は回収率の低下が著しく、本当に民意をすくい上げているのかといった疑問の声も出ている。背景にプライバシー意識の高まりや昼間不在の家庭が増えていることなど、調査環境が厳しくなっていることが指摘されている。現行の手法の見直しや、その特性に着目した新しい取り組みも模索されている。民意を測る手だてとしての世論調査の今後はどうなるか。

キーワード:民意、回収率、プライバシー

(研究論文)

カンボジアの絹織物生産における性別役割分業の変化
-プレイ・ヴェーン州 P村の男性生産者増加の事例-

朝日由実子

要旨

In most Southeast Asian countries, hand weaving is regarded as women’ s work. Reid, A. (1993) noted that before the 19th century, royal courts in these areas valued imported luxury textiles from China and India more than they did locally produced textiles. For this reason, textile production in this area was not commercialized and was typically done by women as a side business. In Cambodia, previous studies on the silk weaving industry also regard hand weaving as women’ s work. In addition, in-depth studies that identify textile producers in Cambodia are limited.
This paper aims to clarify how and why the gender-based division of labor in the silk weaving industry in Cambodia changed, based on my field research in a village in the Prey Veng Province. Under the country’ s transition to the market economy beginning in the mid-1990s, demand for luxury silk textiles has increased, particularly in the capital of Cambodia. Thus, rural weavers could benefit from increased opportunities to earn. Furthermore, this industry provides a viable source of income for rural residents to address the challenges of landlessness and demand for cash money. Hence, many young male weavers have emerged. This paper discusses the characteristics of male weavers in the studying village.

キーワード:絹織物生産、性別役割分業、社会変容、カンボジア

(研究ノート)

アラビア語母音話者の日本語教育に関する課題

片山浩子

要旨

岡山理科大学留学生別科では、大学へ入学する前段階として1年間の日本語教育を行っている。主に中国からの留学生を受け入れていたが、2013年度には、初めてサウジアラビアからの学生が入ってきた。日本語非母語話者が日本語を習得する際、文法や発音、書き取りなどに問題が生じるが、アラビア母語話者も例外ではない。さらに、13年度に入ってきたサウジアラビアの学生の日本語学習歴は全くない状況であったため、文字と音声を一致させるところからのスタートとなった。4月に入学してからの10カ月程の間、日本語を指導することで生じた。課題についてまとめる。

キーワード:アラビア語 日本語 日本語教育 母音 ラマダン

(研究ノート)

新『新しい歴史教科書』・『新しい日本の歴史』における修正要求箇所への対応について(2)

宮崎由幹徳

要旨

前稿では、改訂を重ねる『新しい歴史教科書』をとり上げ、近年の学会での研究成果をどれほど踏まえているのかということについて、2001(平成13)年に韓国政府が修正を求めた箇所の中からひとまず4箇所をとり上げ、分析、検証を行った。
本稿では引き続き、2箇所についてとり上げ、分析、検証を行ったが、前稿で見られたような、何らかの意図すら感じられるといった性格のものは見られなかったものの、前稿同様、初出版時の記述がその当時の学会での研究成果を十二分に反映し、その後の研究動向に照らしてもその記述が誤りとは言えないような場合でも韓国政府から問題視されていた箇所を削除していたり、記載する内容を大きく変えている部分が見られた。

キーワード:歴史教科書問題 /『 新しい歴史教科書』 /『 新しい日本の歴史』

(研究ノート)

ラオス国ルアンパバーン近郊における土器および焼締陶つくりの継承
-パンルアン村とチャン村の事例から-

中村真里絵・徳澤啓一・北野博司

要旨

本稿はラオス、ルアンパバーン近郊に位置する土器つくりと焼締陶つくりについて、担い手がどのような社会関係のもと土器や焼締陶をつくっているのか、聞き取り調査による記録である。これにより、現在の土器および焼締陶つくりの継承と、ラオスの社会、経済的状況との関わりの一端が明らかになった。具体的には、工業製品の流入に伴う需要の低下やルアンパバーンの観光化に伴う就業先の増加が、これまで母から娘へと継承されてきた土器つくりを停止する間際まで導いた。一方、焼締陶つくりにおいては、父から息子への技術の継承が内戦によりほぼ途絶えていたのにもかかわらず、内戦終結後に、飲酒が解禁され、酒づくりの瓶を受注することをきっかけに、再度、息を吹き返している。このように、土器および焼締陶つくりの調査を通して、人びとが経験してきた近年のラオスの社会変化を照射することは、現在の社会主義に生きる人々の生活の一端を示すことでもある。

(調査報告)

京都祇園祭山鉾巡行参加記(3)-保昌山2013年-

志野敏夫

(調査報告)

大阪天満宮天神祭参加記 -鳳講2013年-

志野敏夫

(調査報告)

Primaly report of traditional earthenware and stoneware making in Bruma
October 2013, in Mandalay region and Shan state, republic of union of Myanmer

Kasama MOONLAMAI・Keiichi TOKUSAWA

(調査報告)

神田川中流域における弥生・古墳時代の遺跡調査
-東京都新宿区穴八幡神社遺跡出土遺物の再整理-

富樫雅彦・小木谷晃与・相澤陽子・後藤理加・徳澤啓一

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