社会調査実習−「アンケート調査」

担当:森

授業の目的

この授業では,テーマを設定し,実際のアンケートにより,データを収集し,集計・報告書作成まで行うことにより,社会調査の実際を体験します。

授業の計画

第1週: オリエンテーション(アンケート調査の流れと情報収集・分析・発信の方法)
第2週: アンケート調査の企画(問題(テーマ)の明確化と仮説と解決への方略の設定)
第3週: 調査項目の設定(インターネットなどを利用した先行研究の動向のチェックと調査項目設定のための情報収集)
第4週: 調査票(依頼文)の作成1
第5週: 調査票(質問紙)の作成2
第6週: 調査票の作成3(サンプリングによる質問項目の評価と確定)
第7週: 調査の実施(作成したアンケート調査の実施)
第8週: 調査の実施 / データ解析1(Excelへの結果の入力およびデータのクリーニング)
第9週: データ解析2(単純集計と傾向把握,Excelの集計機能の利用)
第10週: データ解析3(項目間分析や多変量解析を利用した分析,統計パッケージの利用)
第11週: データ解析4(データ解析2,3の結果の読み取りと再分析および仮説検証)
第12週: 報告書の作成1(データ解析4の結果を基にした報告内容の整理とWeb公開のページ構成の検討)
第13週: 報告書の作成2(HTML形式での報告書作成)
第14週: 報告書の作成3(HTML形式での報告書作成と公開)
第15週: 成果発表会(Web上)

実習の実施要領

受講体制

1人または2人のグループによる。
ただし,グループを組んだ場合でも計画書や調査票,報告書などすべてのレポートは,1人ずつ完全に独自の内容で作成して提出すること。

実習の順序

  1. 計画書の作成 ・・・ 後記のテーマから任意の1つを選び,現状や問題点をインターネットで検索して把握し,どういう目的の調査をするかを考えたうえで,計画書(→計画書フォーマット)を作成する。
    • 計画書の作成にあたっては,下記の「アンケートの企画(PDF)」を参考にするとよい。
    • 調査対象者は,社会情報学科の学生とする。
      (社会調査のシミュレーションとして,テーマにかかわらず,在籍学生全体を母集団とみたてて,そこから所定の抽出法によって調査対象者(回答者)を抽出する。これは,「授業で行う」ことによる特殊条件であることを理解しておくこと。)
    • 計画書は報告書の一部としても使うため,各自データを保存しておくこと。

  2. 調査票の作成 ・・・ 計画書に基づいて調査票を作成する。
    • 調査票の構成は次のとおりである。
       依頼文(調査目的を含む)
       質問文(フェイスシートを含む。質問紙作成時の注意事項(後記)を守ること)
       (お礼)
    • 調査票の体裁はA4サイズ1枚とし(片面:これもこの「授業」のみの条件),文字のサイズ,レイアウトは回答者にやさしいものとなるように配慮。
    • 調査票(依頼文・質問文)は点検を受けた後,提出する。

  3. 調査の実施
    • 1人または1グループが作成した調査票は,計画書で指定した抽出法で抽出された人たちに,実際に回答を求める。

       
  4. データの分析 ・・・ 調査結果をExcelに入力して集計・分析し,統計パッケージなどを活用して分析する。

     
  5. 報告書の作成 ・・・ 報告書を作成し,学内Webに公開する。

     

テーマ

  • 「社会」を調べる。(単なるアンケートではなく「社会調査」!)
    得られた結果をどう使うのか
    をしっかり決める。
    • たとえば,「会社の企画担当:新しい商品にどんな観点を加味させればよいか」「学食の店主:学生に愛してもらえる学食にするにはどうすればよいか」といった場面想定をするとよい。
  • グループの場合は2人で1つのテーマを選択する。
  • ここにあげたのは参考。下記以外のテーマもかまわない。いずれも「社会調査」として必要な調査となりうるものであるおと(必要に応じて相談のこと)。
     
     政権政治  税金・無駄遣い  経済問題・経済不況  教育問題
     エネルギー問題  リスク管理  防災  社会マナー
     就職環境  少子化問題  結婚観  喫煙/飲酒
     環境保護/環境意識  郷土・地元意識  地方活性  裁判員制度
     コンビニ  電子マネー  ICカード  ネットショッピング
     量販店  インフラ整備/生活環境  ユビキタス  プライバシー/個人情報
     携帯電話・スマホ  モバイル  地上デジタル放送  スポーツ・サークル
     世界遺産  旅行  ファッション・流行  ポイント制度 
     アルバイト  生活様式  ベストセラー  文字・漢字
     社会情報実習αの補完  

 

  • 過去の例
  • 学生コンビニ利用についてのアンケート 9 理大バス停エスカレーターの調査 2 薄型テレビの調査 4(△)
    若者の携帯電話における意識と傾向についての分析 8 ポータブルプレーヤーについての意識調査 6(△) デジカメについてのアンケート 2
    大学生の外食について 2 中華料理に関するアンケート  
    コンビニの利用状況について 24 (コンビニの利用目的に関するアンケート) (コンビニに必要なものについて)
    (学内、学外の比較によるコンビニ利用のアンケート) (岡山理科大学のコンビニエンスストアについて) 世界遺産の認知度の調査アンケート 4
    携帯電話に関するアンケート 12 (電子マネー搭載の携帯電話端末について) (携帯の依存について)
    (携帯電話の番号ポータビリティ制度実施にあたってのアンケ−ト) (携帯電話会社(キャリア)の人気ランキング) (携帯電話のモラルについてのアンケート)
    少子化問題の調査 3 電子マネーに関するアンケート 2 違法駐輪に関するアンケート 2 (△)
    放置自転車に関するアンケート 2 (△) 岡山の路面電車に関するアンケート 2 音楽配信の認知度に対するアンケート 2(△)
    薄型テレビに対するアンケート 2 (△) ハワイはなぜ人気があるのかを検証するアンケート 2 郵便局に関するアンケート
    デジタルオーディオプレーヤーに関するアンケート(△) 学生の通学についてのアンケート サッカー中継と番組の人気度調査(△)
    オリンピック観戦に関するアンケート 電車内のマナーについて 動物園の利用状況と活性化調査について
    大学生のアルバイトに関する意識調査 2年前    

 


質問文作成の条件

  • アンケートの質問には次の種類がある。項目だけを挙げると次のとおりである。(詳しくはアンケートの計画の「3.質問文の作成要領」を参照)
      選択肢回答
         単一回答(二項回答,多項回答)
         複数回答(無制限,制限つき)
         順位回答(すべてに順位をつける,上位だけに順位をつける)
         段階選択(5段階,4段階など)
         枝分かれ質問
       自由回答
         数値による回答
         文字による回答(通常の文書による自由記述)

     
  • 質問文の作成では,9つのワーディングの問題に留意する。
    • 曖昧な表現|難しい言葉|ステレオタイプと言葉の偏り|ダブルバーレル|インパーソナルとパーソナル|事実判断・価値判断・世間判断|イエス・テンデンシー|キャリーオーバー効果|誘導質問(「社会調査法」の講義内容を復習すること)

       
  • この実習では,時間等の都合を考え,以下の制限を設ける。 本番の社会調査では,下記のような制限は通常設けない。
    1. 1人または2人のグループで実施する。 ただし,計画書,依頼文,調査票,報告書は,個別の作成して提出する。
    2. 調査対象者を社会情報学科の学生(=母集団と見立てる)とする。
    3. 60人分の回答を集める。
    4. 依頼文も作成するが,実際の配布は,調査票のみとする(依頼文は配布しない)。
    5. 選択肢回答のタイプ(単一回答,複数回答,順位回答,段階選択)のうち,最低3つのタイプを含める 。
    6. 枝分かれ質問により,一部の人しか答えられないような質問は作らない。たとえば,Q1で「あなたはiPadを持っていますか」と聞き,Q2以下の質問を「持っている」と答えた人だけを対象にするような設定にしないこと。今回,回答者数が少ないので,集計できる回答が減ってしまう。
    7. 数値で回答する質問を必ず1つ以上入れる。集計で,連続量の処理も行えるようにするため。
    8. 自由回答は,後処理の関係から数値による回答のみとする。なお,選択肢の最後に「その他」を設け,その具体的な内容を自由記述させるのはOKとする。
    9. 質問の数は,おおむね7問から10問程度とし,調査票に直接回答するものとする(質問と回答を合わせて,A4サイズ1ページに納まるように)。
    10. 集計には,可視化(グラフ)や複合集計,多変量解析による集計も入れること。(Excelによる単純集計に終わらず,「データ解析システム」や「行動計量学」で学んだ集計を積極的に利用すること)
      = 集計の方法から,逆に,設問の形式を考えることができる。
    11. 提出物  印刷して提出・・・依頼文,調査票(質問紙),計画書   Webに提出・・・報告書 (+ 作成した電子ファイルすべて)
       

参考書

  • 社会情報入門(1年前期)の「社会調査」関係のプリントや授業ノート
  • データ解析基礎(1年前期)の教科書・・・「ミニマムエッセンス統計学」 三土修平,日本評論社,2004年
  • 社会調査法(1年後記)の教科書・・・「社会調査へのアプローチ―論理と方法」 大谷,後藤,永野,木下,小松著,ミネルヴァ書房,1999年
  • データ解析システムのWebサイト・・・http://mo161.soci.ous.ac.jp/R/DA_R/
  • 行動計量学のWebサイト・・・http://mo161.soci.ous.ac.jp/@d/indexj.html

社会調査「アンケート」の理論(復習)

アンケートの流れ

アンケートの流れ

アンケートの企画

アンケートの企画(PDF)

計画書フォーマット(MS Word:ダウンロードして利用すること)

アンケートの質問例

質問紙の作成

依頼文(ビジネス文書形式)

アンケート(質問用紙)

実 査

サンプリング用データ (期間限定公開:学内専用)

収集データの集計

集計方法

報告書の作成

Web報告書

補 足

本授業は社会調査士認定科目(昨年度開講の「社会情報実習α」と対 → 成果報告書が社会調査士認定機構のWebに公開されます。